日時:2021年9月1日(水)18:30~20:30

会場:オンライン(Zoomミーティング)

講師: 鈴木 孝司 先生 (公財) 医療機器センター

内容:デジタルヘルスとAI

 

鈴木先生より以下の内容について講義していただきました。

・人工知能(AI)の医療応用の事例

・日米における法的位置づけ

・AIは医師を超えるか?

・AIを用いた医療機器の保険上の評価

以下、ご講演のポイントを列挙しました。

 

・人工知能は医師による最終確認の要否と市販後の性能変化の有無の2×2のマトリックスで位置づけを整理することが出来ます。これらのうち機械学習による性能変化が有る機器の承認事例はありません。一方、機械学習による性能変化が無い機器では、医師の最終確認が必要なものの承認事例は従来からありますが、医師の最終確認が不要なものは日本での承認例は未だありません。唯一、米国で糖尿病性網膜症自動検出機器の承認例があるのみです。

 

・市販後に学習する(性能変化する)プログラムではどこかのタイミングでデータを固定して性能を評価する必要があるなど、困難な課題があります。これに対して日本では改善・改良計画事前確認制度 IDATENが法制化されて解決の方向性が検討されています。一方、米国ではPreCert Program(開発会社にお墨付きを与える制度)がパイロット的に実施されています。

 

・AIの性能評価には「正解」が必要ですが、現状の臨床尺度(=専門医の能力)を「正解」としている限りにおいては、AIが専門医を越える臨床性能を実現することは不可能です。但し、AIにより従来の臨床尺度に関係しない新たな指標(新規のバイオマーカ-)が見つかった場合はこの限りではなく、従来の機器とは臨床的位置づけが異なる、新しい医療機器となり得ます。

 

・医療機器は診療報酬・薬価制度で決められている「公定メニュー」、「公定価格」によって統制された特殊なビジネス分野と言えます。医療機器は以下のいずれかの位置づけで保険収載されおり、各々の特性に合わせたビジネス戦略が必要となります。

 

・技術料に含まれる消耗品(注射筒)

・技術料に含まれる設備(CT装置)

・技術料+加算(超音波メス)

・技術料+個別価格(心臓ペースメーカ)

 

・AIを用いた支援機器の保険上の評価は現状は困難な状況です。 医療機器の保険適用に係る考え方として、「患者負担があることも踏まえ、医療従事者の負担軽減、技術の平準化等のみに着目して評価を行うことは困難」とされており、例えば医療行為のコスト節約や効率化、技術の平準化のみでは保険はつきません。この部分に関しては中医協などで議論が進められています。

 

以上、今回のHiDEPの多くのチームが取り組んでいるデジタル機器開発の現状や将来の方向性について貴重な情報を提供していただきました。また最後のQ&Aセッションでは、AI診断支援機器の薬価収載の見通しは今後も厳しいこと、デジタル機器はどう保険評価されるかが未知数であるため従来機器より開発は難しいこと、ビジネス立ち上げの前にまずは確実なマネタイズの仕組みを考えておくべき、など貴重なアドバイスをしていただきました。

 

以上

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