日時:2024年8月3日(土)10:00-17::00

会場:オンライン(Zoom)

①10:00-12:00

講師:望月 修一 先生

   山梨大学大学院 総合研究部 医学域臨床研究支援講座    教授

   山梨大学 医学部附属病院 臨床研究連携推進部 部長

   元・PMDAスペシャリスト

内容:医療機器の承認審査

②13:00-15:00

講師:鈴木 孝司 先生

   (公財) 医療機器センター 審査役

内容:デジタルヘルス

③15:00-17:00

講師:若林 靖永 先生

   佛教大学社会学部 教授

   ╱京都大学 名誉教授・客員教授

内容:マーケティング

 

①望月先生講義

先生のPMDAスペシャリストとしての豊富なご経験を基に、以下の項目について非常にわかりやすく解説していただきました。

・医療機器開発の流れ

・医薬品医療機器法とは

・医療機器とは、

 医療機器のクラス分類と届出・認証・承認

・PMDAの三大業務

・臨床研究の必要性

・PMDAの相談業務

・医療機器の製造販売

・医療機器の有用性

・プログラム医療機器(SaMD)の評価と審査

さらに、「開発チームの重要性」に関して、以下のポイントを列挙していただきました。

-医療機器開発を「ひとり」でやろうとしない。

-医学・工学・知財・倫理・薬事・保険、さらに、「マーケティング・資金調達・経営・・・」の専門性が必要。

-他の分野の意見を素直に聞けるように。特に医師・研究者(自戒をこめて)

-未来予測は外れることも当然ある。そのため、リスクヘッジ(他の事業などの検討)が必要。

まとめとして、「医療機器を患者さんに届けるため」のポイントを列挙していただきました。

-「医療機器」を市場に流通させるためには薬事承認(認証・届出)が必要

-臨床試験が必要な場合は、臨床研究ではなくGCP準拠の治験が必要

-開発の初期段階で企業(製造販売業者)を見つける、もしくはスタートアップ(ベンチャー)を起こす

-知財を意識した研究と情報公開

-承認はゴールではなくスタート

-PMDA・AMED・ARO・TLOなどをチームに

-人材育成

-公的資金の利用

Q&Aセッションでは、PMDA相談の位置づけやタイミング、相談をかける際の注意点など、様々な質問が出ましたが、いずれの質問に対しても非常に明確に回答していただきました。

②鈴木先生講義

医療機器を研究開発する企業やアカデミアの講師、メンターとしてご活躍され、現在は医療機器の認証事業に携わっておられる鈴木先生に講演を行っていただきました。今回の講演では、デジタルヘルス分野に絞り、以下の内容に沿って多くの事例を交えながら解説していただきました。

1. ソフトウェア(SaMD)関連のビジネスモデル調査(2015)

・6つのビジネスモデルに分類(デバイス販売ビジネス、情報蓄積・共有ビジネス、情報分析ビジネス、情報交換ビジネス(コミュニティ提供)、モニタリング(アラート)ビジネス、教育コンテンツビジネス)

・調査以降10年を経ての答え合わせと事例紹介

2. 医療におけるDxが変えるもの・変えないもの。

事例:糖尿病治療、ニコチン依存症治療、本態性高血圧症の治療補助、非熟練看護師による心エコー検査、早期に読影を要求する支援システム

3. 人工知能の医療応用における基本的な考え方

・医療機器の人工知能への応用が加速

・AI医療機器を整理するマトリクス

-医師による最終判断(いるvsいらない)×市販後学習による性能変化(するvsしない)のマトリックスでの位置付けの整理

・薬機法改正とIDATEN

・米国FDAにおけるPreCert Program

まとめとして、以下のように整理していただきました。

・2015年当時に考えられたSaMD関連ビジネスモデルの

 6類型

 –10年後の答え合わせ

 –いくつかは既に消えていった…

 –複数のものを組み合わせたものが広まりつつある

 ・医療におけるDxが、変えるもの・変えないもの

 –医療上の目的は変わらない

 –市場や顧客は変わる → 既に様々な製品が登場

・人工知能の医療応用における基本的な考え方

 –AI医療機器を理解するための2×2マトリクス

 –医師の最終判断の要・不要、学習による性能変化の有無

Q&Aセッションでは、今後起業する場合にどのような領域にチャンスがあるか、医療機器における個人情報の取り扱いなどの質問がなされました。

③若林先生講義

以下の内容について、興味深い最新の事例や様々な学説を交えて丁寧に解説していただきました。

・マーケティングとは

 -マーケティングの再考・定義・範囲、医療分野での価値

・マーケティング戦略

 (マーケティングマネジメント)とは何か

 -顧客にとっての価値創造

 -市場細分化マーケティング

  (Segmentation、Targeting、Positioning)

 -マーケティングミックス(4Ps)

  製品(product)、. 価格(price)、コミュニケーション

  (promotion)、流通チャネル(place)

 -医療分野でマーケティング戦略?

 1. 患者(ターゲット)の範囲の設定と市場規模

 2. 自覚のない患者(ターゲット)へのアプローチ

 3. 代替製品等との競争関係の分析と競争戦略

 4. 医療機関、医療従事者による当該製品・サービスの採

   用を広げるマーケティング・コミュニケーション

 5. 医療従事者に広げるための学会対応や使用経験の拡大

   と推奨

 6. 代理店等の活用

 7. 価格設定

 8. 製品ラインアップの展開や海外市場

・サービスのマーケティングとは

 -サービスのマーケティング7Ps

 -医療分野でサービス戦略?

 1. 医療はサービス、だから…

 2. 医療は目に見えない。だからネーミングやデザイン、

   キャラクターなど見える部分の設計が重要

 3. 医療は利用者の体験、経験談などのクチコミが重視さ

   れる

 4. 医療は人。人と人との関係、安心感や信頼感があって

   はじめて医療は成立する

 5. 医療はプロセス。利用を始めてからの一連の流れを設

   計しフォロー評価する

・既存市場適応vs.新市場創造のマーケティング・マネジメントとは

 -エフェクチュエーション「4つの原則」と「一つの世界

  観」

 -コーゼーションVSエフェクチュエーション

 -医療分野でのエフェクチュエーション

・デジタルマーケティングとは

 -医療分野でのデジタルマーケティング

・ソーシャルマーケティング(患者の行動変容)とは

今回は、マーケティングの理論や医療分野への応用について学ぶ貴重な機会となりました。今回得られた知識を、今後のHiDEPの実践パートでぜひ活用していただければと思います。

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