今回は、京都市、(財)京都高度技術研究所(ASTEM)との共催で、ライフサイエンス分野での新事業創出、起業に関心をお持ちの学内外の学生、研究者、若手社会人を主な対象として、(株)SCREENホールディングスの上志正博様(新規事業担当上席執行役員)、(株)マトリクソームの山本卓司様(代表取締役社長)のお二方にご講演いただきました(上志様、山本様のご経歴は下記参照)。京都市、ASTEMは、「京都市ライフイノベーション創出支援センター」を拠点として、ライフサイエンス分野における新事業や大学発ベンチャーの創出支援に取り組んでおられます。モデレーターは、日本ベーリンガーインゲルハイム(株)の野々村和彦様(創薬研究アライアンス部マネージャー)です。野々村様は、京都大学農学研究科の博士課程を修了された後、日本と外資の製薬企業、さらにバイオベンチャーでのキャリアを積まれました。

モデレーター・野々村様からの自己紹介と日本ベーリンガーインゲルハイム(株)のご紹介でスタートし、続いて、(株)SCREENホールディングスの上志様のご講演です。(株)SCREENホールディングスは、半導体・液晶製造装置、印刷関連機器などの産業用機器を製造しており、売上の70%を半導体機器事業が占めています。ライフサイエンス分野では、同社の画像処理技術を応用し、検査試薬なしで細胞の増殖や形態の変化を高速に計測・分析できる高速3D細胞スキャナーを展開しています。現在、未知の市場での、新規顧客の獲得を目指しています。

次に、(株)マトリクソームの山本様のご講演です。「マトリクソーム」は、大阪大学蛋白質研究所・関口清俊教授が提唱する造語で、生体内の細胞の性質や挙動や運命を決定する、細胞と細胞外環境との相互作用を指す概念です。(株)マトリクソームは、マトリクソームの研究およびマトリクソームを活用した研究を行う会社として、大阪大学と(株)ニッピのジョイントベンチャーとして設立されました。ES/iPS細胞を効率的かつ容易に培養できる幹細胞培養基質(全長のラミニン511から細胞と接着する部位を断片化ラミニン511-E8断片)を販売しています。既に、大阪大学ベンチャーキャピタル(株)、SMBCベンチャーキャピタル(株)から出資を受けています。課題として、知的財産の確保を挙げておられました。ES/iPS細胞から各種細胞への分化誘導に適した製品全てを権利化・維持するとなると莫大なコストがかかるためです。事業戦略とコストのバランスが重要とのことでした。

最後のセッションは、上志様、山本様に加え、(株)幹細胞&デバイス研究所の加藤謙介様(代表取締役CEO)と(株)AFIテクノロジーの円城寺隆治様(代表取締役社長)にもご参加いただいてのパネルディスカッションです。モデレーターの野々村様からは、様々な質問が投げかけられました。「ベンチャー設立のきっかけは?」「自分の好きなこと、得意なことを仕事にしたかった」(円城寺様)、「ベンチャーとの連携において、何を求めるか?」「新しい領域で事業を立ち上げようとするとき、その領域での強み(技術力、顧客)」(上志様)、「ベンチャーの課題は?」「営業力、人材確保」(ベンチャー3社)などなど。パネルディスカッションの最後に、各パネラーから最後の一声をいただきました。「一緒に夢を持って事業を創り上げていきたい」(上志様)、「共感してくれる仲間を見つけることが重要」(山本様)、「決して諦めず、できるまでやる」(加藤様)、「一人では絶対ムリ。自分の苦手なところを助けてくれる仲間が必要。いつもニコニコして決して諦めない」(円城寺様)。

ご登壇いただいた4名の方々のご発表だけでなく、モデレーターとしての野々村様の運営は素晴らしかったです。各々のご発表の都度、発表内容を要約してくださり、さらにライフサイエンス分野での抱負なご経験を絡めて、ご自身のご意見を述べられていました。

パネルディスカッションの後は、軽食をとりながらの交流会。京都市産業観光局新産業振興室の竹内清様(ライフイノベーション創出支援課長)のご挨拶と乾杯のご発声で始まり、4人の登壇者、モデレーターを中心に、皆様、交流を深めておられました。

次回の交流会は4/17(火)です。日本ベーリンガーインゲルハイム(株)と共催で「第3回クロスボーダー創薬開発セミナー」として開催いたします。タイトルは「産学連携で取り組むドラッグリポジショニング」。産学連携でリポジショニングを進めているケースを紹介し、その課題や展望などについて議論いたします。ドラッグリポジショニングにご関心のある研究者、学生、また企業の方々など、奮ってご参加ください。

【PDF】第3回クロスボーダー創薬開発セミナー_20180417_ポスター

 

【講演者ご経歴】

  • (株)SCREENホールディングス新規事業担当上席執行役員 上志正博(じょうし まさひろ)

同志社大学経済学部卒業後1991年に(株)三和銀行に入行。1996年に大日本スクリーン製造(株)(現:(株)SCREENホールディングス)に入社。半導体機器事業部にて営業、生産管理にたずさわった後、2006年米国DNS Electronics, LLC社長。帰国後、経営企画室長時に同社の新規事業ビジョン策定を担当。2015年より現職。ライフサイエンス分野を含めた新規事業担当上席執行役員。「脱本業」「拡本業」をキーワードに企業連携やM&Aを含めたエレクトロニクスからの新事業展開を担う。

(株)SCREENホールディングス http://www.screen.co.jp/

 

  • (株)マトリクソーム 代表取締役社長 山本卓司(やまもと たくじ)

京都大学農学修士修了後(株)ニッピへ入社。研究所でBSE検査キットとES/iPS細胞培養用基材であるラミニンE8断片の開発に従事する。社会人学生として新潟大学農学研究科博士号を取得後、2015年から、ライフサイエンス試薬販売部門の責任者を務める。2015年12月に(株)ニッピと大阪大学ベンチャーキャピタル(株)の出資による(株)マトリクソームを立ち上げ、2016年1月から代表取締役社長に就任。

(株)マトリクソーム http://www.matrixome.co.jp/

 

Recently POSTS
PAGE TOP