2024.09.24
第83回IHK交流会の実施報告です。
第83回イノベーションハブ京都 交流会
肝胆膵移植外科
診療科紹介 臨床ニーズ発表
日時:2024年9月10日(火)18:00-19:00
会場:ハイブリッド(事前登録制)
対象:オープン(学内外の学生、研究者、企業の方など)
内容:
1.「肝胆膵移植外科における未来医療のご紹介」
【講演者】肝胆膵移植外科 教授 波多野悦朗
<概要>
・教授就任時に9か年計画を策定し、初期として挙げた項目について取り組んできた。中期として取り組む項目は、中堅による大型予算の獲得、医療機器開発、関連病院での臨床試験の立ち上げである。
・先人たちは当時の手術技術および適応限界を突破した。我々大学の肝胆膵外科に求められるのは最後の砦としての自負であり、目指すところは、コミュニケーションとリーダシップ、多様性を許容する懐、限界にチャレンジする伝統である。
2.患者さんにも外科医にもやさしい手術の実現を目指して
【講演者】助教 西野裕人
<概要>
高度な技能が必要とされる肝胆膵外科手術に科学技術を融合し、見えないモノを可視化する新たなナビゲーション手術を探索している。これにより、若手外科医の探求心を深め、患者さんも外科医にも安全安心なやさしい手術を実現したい。
3.肝移植のハードルを下げる
-持続可能でスマートな移植医療をめざして-
【講演者】助教 影山詔一
<概要>
肝移植は先人の努力のお陰で、中堅執刀医で対応が可能となり、手術時間の短縮と手術成績の向上が実現したが、書類仕事とデータ整理が大変であるという課題があった。データシートを廃止し、移植関連文書の簡素化とデータベース化し、症例登録の自動化を行った。これにより効率的な業務、ミスの少ない症例報告書の作成を実現した。
現在は、肝グラフトの器械灌流装置の導入、特に室温灌流保存に国内メーカと共同開発を行っている。保存温度を上げることで飛躍的に肝臓の酸素消費量が増加し、肝臓のViability維持に必要な灌流量が増大する。本装置を完成させて、不適とされるグラフトを移植可能にし、ドナープールの増大を目指している。
4.外科医がけん引するattractiveな細胞移植治療
【講演者】助教 山根佳
<概要>
1型糖尿病に対する移植治療として、膵臓移植と膵島移植がある。加えて、iPS細胞から作成した膵島細胞移植の医師主導治験を、2025年より開始予定である。将来的にこれらの移植治療は、患者のニーズに合わせて選択され、実施されていくと予想される。我々は現在膵島移植を中心に行っているが、今後移植工程の煩雑な作業を解決したい。
①膵島細胞の分離は30年以上進化しておらず長時間の手作業が必要であるという課題がある。現在海外メーカの半自動化装置を導入し臨床応用を目指して、大動物での実験を行っている。
②移植する膵島細胞の個数は顕微鏡で観察しながらマニュアルでカウントしており、産学連携で解決したい。将来的には、膵臓移植・膵島移植とも患者のニーズに合わせることができる、次世代の糖尿病移植治療を目指したい。