●アントレプレナーシップ

椙山 泰生 先生(京都大学 経営管理大学院教授)

バリュープロポーザル(ビジネスモデル)、リーンスタートアップ、Effectuationについて、簡単な実習や先生のご経験談を交え、分かりやすく解説していただきました。

①バリュープロポーザル(ビジネスモデル)

・最初にcustomerの問題(誰が、何に困っているのか、pain/gainは何か)を明らかにし、次にそれに対するvalue proposition(誰が、どのような手段で解決するのか、本当にそれで解決するのか、なぜあなたが解決できるのか)をしっかり考える。これがダメだとビジネスはうまく行かない。

・プロフィット(マネタイズ)ついては、どうやってお金を払ってもらうのか(詳しくは刊行されている「スマート・プライシング」を参照のこと)、その価格戦略で資金を回収できるのか、価格決定権を握っているのか(competitive pricing)がポイント。

②リーンスタートアップ

・基本はlearning processであり、ますはお客さんに持って行って見て、フィードバックをもらう。

・仮説を立てる→test and qualify the problem→test the product concept (MVPを使う)→verify→iterate or pivot or exitの流れとなる。

③Effectuation

・目的や目標を決めてから手段を考えるcausal approachではなく、出来ることを挙げて(自分が誰か、自分に何ができるか、誰を知っているか、自分の文脈)、それを利用して何をするかを考える(effectual approach)。世の中で成功しているビジネスのほとんどがこのアプローチで動いているとのこと。

 

最後に、ビジネスモデルを作る際のリーンプロセスでは、自分自身が軸となること、自分がどれだけ効果的な存在になりうるかを考えることが重要とされました。また、effectuationとcustomer needsが両立するのかとの疑問があるかもしれないが、effectuationは常に軸としておいて置くべきだがneedsは変えられる。従って、needsからスタートして自分が提供可能なsolutionがうまくはまれば良いし、うまく行かない時は別のneedsからスタートすることが一般的な考え方であるとのことでした。

 

  • ●デジタルヘルス:医療機器のイノベーションとは?

鈴木 孝司 先生(医療機器センター 医療機器産業研究所 調査研究室 室長)

 

日本を代表する医シンクタンクに所属され、AMEDの医療機器関係の審査員も務められる先生の豊富な知識とご経験を踏まえ、以下について事例を交えて分かりやすく丁寧に説明していただきました。また今後の医療機器産業の変化についてのご見解も紹介していただきました。

 

・医療機器のイノベーションには、既存技術の組み合わせによる新たな価値創出、元の製品の目的とは異なる軸の価値の創出、長期投資を伴う技術革新による新たな価値創出、の3つの形態がある。

・イノベーションにおいて、安価な代替手段は医療の質を下げないが、市場と顧客は変化することがある。

・AI搭載機器の審査は、医師の最終確認(いる/いらない)と市販後の性能変化(する/しない)の2軸による組み合わせがポイントとなる。

・医師の最終確認が不要である世界唯一の承認例が米国の糖尿病網膜症自動検出機器

・市販後に性能変化する機器の承認例は今のところない。市販後の性能変化の考え方については日本ではH29厚労研究事業で検討、米国ではFDAによりPreCert Program(会社にお墨付きを与える)を試行中。米国の影響を受けるのでその動向を注視しておくべき。

 

今回、細部にまで踏み込んだご説明や貴重なコメントを頂きました。また時間は十分ではありませんでしたが、活発な質疑にも丁寧にお答えいただきました。一般的にも規制関係の実際的な判断は法律や規則を読むだけではなかなか難しいと思います。HiDEPにおいても今後アイデアが具体化してから様々な疑問が出てくると思いますので、先生には是非またご相談に乗っていただければと思います。

 

 

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