2021年度 HiDEP-advance 実施報告(2022年1月18日~21

 

【日時】2022年1月18日(火)~21日(金) 18:00~20:00

【対象】学内外研究者、大学院生、企業人

【形式】オンライン(Zoom)

【主催】京都大学大学院医学研究科 「医学領域」産学連携推進機構

【共催】京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構

【講師】

・内海潤 先生 ティア・リサーチ・コンサルティング(合) 代表執行社員/がん研究会 法務・知財室 シニアアドバイザー

・山本伸 先生 シミックホールディングス(株)Team Sprint 共同代表/多摩大学大学院 客員教授

・岩崎大地 先生 シミックホールディングス(株) 執行役員/コーポレートビジネスデベロップメント部 部長

・長谷川徹 先生 シミック(株)臨床事業第二本部6部(医療機器臨床) 部長

【スケジュール】

1.1/18(火) 医療機器開発のための基礎知識 (内海先生)

2.1/19(水) 医療機器(Class Ⅳ)を題材にコンセプトシートの確認 (山本先生)

3.1/20(木) 医療機器開発(Class Ⅳ)に必要な非臨床試験 (岩崎先生)

4.1/21(金) 医療機器開発(Class Ⅳ)の臨床試験 (長谷川先生)

 

開発コンセプト決定までの早期ステージのHiDEP21に続いて、製品開発から非臨床・臨床研究、上市までの後期ステージを対象としたHiDEP-advanceを開催しました。参加者は30名強、4日間の集中セミナーとしました。講師はHiDEP立ち上げ当初から協力していただいている内海先生、医療機器開発の第一線で活躍されているシミックホールディングス(株)の山本先生、岩崎先生、長谷川先生にお願いしました。

 

1.医療機器開発のための基礎知識 (内海先生)

まずは、医療機器開発に必要な基礎知識を整理していただきました。この分野になじみがない参加者にとっては本セミナーのイントロダクションとなり、ありがたい講義であったと思います。

つづいて、最近注目されているデジタルヘルス機器の開発に関して、先生独自の分析や御見解を交えながら、幅広い視点の解説を行っていただきました。特に「Patient Centricity」、「Diverse Team Innnovation」のマインドセットが重要であると強調されたことが印象的でした。

事例研究では、今回の集中セミナーの題材であるClassⅣ医療機器の癒着防止剤(アドスプレー)に関して、特許出願等の実例を示しつつ事業化までの知財戦略のあり方を解説していただきました。

以下、講義の内容:

-医薬品開発と医療機器開発の基礎的要件の整理

・技術戦略、知財戦略、薬事戦略

-デジタル化の進展で再定義される医療機器の在り方

・誰から見たアンメット・メディカル・ニーズか?

・デジタルヘルス機器の開発状況

・医療現場の視点(Patient Centricity)

・事業性から見た医療分野のイノベーションの特殊性(Diverse Team Innnovation)

-事例研究:ClassⅣ医療機器癒着防止剤(アドスプレー)の知財戦略

・医療現場課題の把握と解説策の策定

・技術開発と事業化までの知財戦略

・後継製品のための技術的課題と知財戦略(ディスカッション)

 

 

2.医療機器(Class Ⅳ)を題材にコンセプトシートの確認 (山本先生)

山本先生はアドスプレーの先行品の癒着防止剤(セプラフィルム)のプロジェクトマネジャーのご経験をお持ちです。

講演では、ClassⅣ医療機器の開発から上市までの戦略立案に関して、①製品の価値と顧客ニーズのマッチング、②市場性評価、③開発薬事の視点、④ライフサイクル・マネジメントの視点、の4つのカテゴリーに分け、ご経験や具体的事例を交えてわかりやすく解説していただきました。

また、ビジネス全体像の構造化・可視化にはビジネスモデルキャンバスの活用が最も有用とされました。実例として、アドスプレーについて、キャンバス上での9つの要素毎の整理方法を解説していただきました。ワークショップでは、受講生がmiroホワイトボードに用意されたキャンバスを用いて各自のアイデアを整理する訓練も行いました。

 

3.医療機器開発(Class Ⅳ)に必要な非臨床試験 (岩崎先生)

まずは生物学的安全性評価の基本的な考え方、及び、下記の項目の解説を行っていただきました。

・生物学的安全性の規格

・なぜ安全性を評価するのか

・原材料とは

・最終製品とは

・ハザード/リスクとは

・基本的考え方の構成

・評価項目の選択

例えばPMDA審査官からの質問に対して、回答が必須(must)の場合と興味による確認(nice to have)の場合があり、その選別を行うためには基本的な考え方をしっかり理解しておくことが必要とのことでした。

グループワークセッションでは、事前課題であったアドスプレーの安全性評価試験、コンセプト証明の非臨床試験に関して、ブレークアウトルームに分かれて意見交換を行いました。

最後に、試験方法選択の基準や試験材料の注意点、細胞毒性試験、感作性試験、遺伝毒性試験、埋植試験等の各試験の特徴や注意点について丁寧に解説していただきました。研究者や起業家がこれらの全てを理解し判断するのは困難ですので、適宜、CRO等に相談したほうが良いとのことでした。

 

 

4.医療機器開発(Class Ⅳ)の臨床試験 (長谷川先生)

長谷川先生は25年以上にわたり企業主導の治験に携わっておられます。

講義の前半は、臨床試験に関する以下の基本的事項を説明していただきました。

・治験そのものの理解

・治験を実施するための手順の準備

・治験を実施できる組織の構築(含む人材の確保)

・治験機器の用意 (製造体制を含む)

グループワークセッションでは、「先行品のアドスプレーがある中で、どういう癒着防止剤なら今後市場に出すことが出来るか」についての意見交換を行いました。

後半は、「癒着防止材を題材とした治験実施計画の考察」として、どのような治験実施計画書(プロトコール)を作成したら良いのか、以下の主要項目をどう設定していくのか、治験を実施する上での課題などについて丁寧に解説していただきました。

・被験製品の特徴は?

・試験対象

・試験目的

・評価項目(主に主要評価項目)

・評価項目を判断するための観察項目

・症例数設計

 

以上、4日間に渡って充実した内容の講義、ワークショップが実施出来たと思います。今回のプログラムを通じて得られた知識・情報が、企業で医療機器開発に携わる方、起業家の方、研究者の方の今後の活動に少しでもお役に立てばと思います。

以上

 

 

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