日時:2021年9月15日(水)18:30~20:30

会場:オンライン(Zoomミーティング)

講師: 小金井 匠 先生 経済産業省 医療・福祉機器産業室 室長補佐

内容:医療機器の特許審査

 

特許庁でのベンチャー支援や医療機器審査などで豊富な経験をお持ちの小金井先生に、以下のトピックスについて講義を行っていただきました。

1.知的財産の基礎

・知的財産権には特許権、意匠権、商標権、営業機密等があるがいずれも出願は”早い者勝ち”であることに留意。AIについては営業機密として扱うケースが多い。

・通常審査以外に早期審査や分割審査などの様々な戦略的な出願方法がある。

・知財の3大メリットは、独占、信用(資金調達やM&A)、連携(交渉を有利に)。

・知財対策が不十分な場合に売上低下、利益減少、原価上昇のビジネスリスクがある。

・特許権は、実施する権利ではなく、排他権(他者に実施させないことを担保するもの)。

 

2.特許庁の紹介

・医療機器の審査は審査一部(分析診断)と審査二部(医療機器)で実施。

・1200名の審査官が対応しているが、基本的に順番待ちがあり、平均審査期間は14ヶ月となっている。

 

3.医療機器の特許審査

・特許請求の範囲(クレーム)と明細書の書きぶりが重要であり、ここが弁理士の腕の見せどころ。

・出願されたものの70%が審査請求され、審査請求されたものの86%が拒絶理由通知を受け取って審査官とのやり取りを行う。残り14%はストレートパス。最終的に特許査定を受けるのは、審査請求されたものの75%程度。

・日本では医療行為は特許として認められない。但し、医療機器・医薬品等の”物”の発明や”医療機器の作動方法”は特許化が認められる。

・特許性は、出願時に公開されている文献との有意な差の有無で判断する。新規性(先行文献との相違点)および進歩性(専門家であっても容易にたどりつけない)がポイント。

 

4.起業に向けて注意すべき知財のポイント

・スタートアップ段階では企業価値(経営資源)はほぼ知的財産のみに相当する。

・海外VCからの出資、大手企業とのM&A等においては知財が非常に重視される。

・不十分な知財戦略により資金調達やイグジット機会を逸失する可能性がある。

・事業戦略に即した知財戦略をとるべき(知財戦略を事業計画に織り込む、事業範囲をカバーした知財戦略とする、競合の知財情報を調査する、知財戦略の責任者を経営陣に入れる)。

・情報管理を徹底する(公開情報と秘密情報の線引き、オープン・クローズ戦略)。

 

5.特許庁の支援制度

・IPAS(知財アクセラレーションプログラム)では、毎年、支援スタートアップを選定し、知財メンタリングチームを派遣して知財戦略構築を支援する。

・IP BASE(スタートアップ向け知財コミュニティーサイト)では、イベント情報、SNS、メンバー限定の専門家検索・オンラインQ&Aなどの各種情報を発信している。

・通常審査には14ヶ月がかかるが、スタートアップのスピード感に対応した審査として、面接活用早期審査やスーパー早期審査(平均2か月半、早ければ1か月)の制度がある。

・スタートアップには審査請求料・特許料、国際出願手数料の料金減額サービスがある。

・競合の特許が知りたい場合の中小企業等特許情報分析活用支援事業、権利の侵害で困った場合の判定制度(特許庁が中立・公平な立場から、特許発明の技術的範囲などを判断)などが利用できる。

 

以上ですが、先生は知的財産に対する知識が無かったために失敗したり後悔するベンチャ-を数多く見て来られ、今後は知的財産を自分事として捉えて失敗を無くしてほしいとのことでした。講義でも、「事業戦略に即した知財戦略を」、また、「情報管理の徹底を」の言葉を繰り返し述べられました。これらを肝に銘じ、今回紹介していただいた特許庁各種支援プログラムを必要に応じて活用し、各チームが適切な知的財産戦略を構築していただきたいと思います。

以上

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