2024.10.29
第85回IHK交流会の実施報告です。
第85回イノベーションハブ京都 交流会
脳神経外科
診療科紹介 臨床ニーズ発表
日時:2024年10月21日(月)17:30-18:30
会場:ハイブリッド(事前登録制)
対象:オープン(学内外の学生、研究者、企業の方など)
内容:
0.はじめに
【司会】iACT 医療機器・体外診断薬支援ユニット長
服部華代
本セミナーでは京大病院 脳神経外科から診療科の紹介と開発ニーズを発表し、共同研究を行うパートナー企業とのマッチングを行う。また、iACTとKUMBLが事務局を務める京都大学拠点のMeBKY (Medical Device Base KYOTO)の医療機器開発支援体制とその取り組み、今後のイノベーションハブ京都の予定を共有した。
1.最先端技術による脳神経外科手術
~次世代に求められる技術とは~
【講演者】脳神経外科 教授 荒川芳輝
<概要>
脳神経外科の領域は、脳血管障害・脳腫瘍・脊椎脊髄・先天奇形・てんかんなどの機能的脳神経外科など幅広く多岐にわたる。それゆえ、顕微鏡・内視鏡など機器に加え蛍光色素などの最新技術が導入され、近年ではそれらを融合した外視鏡が普及しつつある。京大病院では術中ナビゲーションやMRIをいち早く導入し、安全で確実な手術を目指してきた。更なる進化の方向性として私からは、3D内視鏡ナビゲーション・プロジェクションマッピング・手術手技学習ナビゲ―ション(AI指導医)などを提案する。未来を担う3名の臨床医から、夫々の担当分野の課題とアプローチを紹介する。
2.頭蓋底腫瘍の手術と再建
~より安全で徹底的な切除と審美性の両立~
【講演者】助教 佐野徳隆
<概要>
頭蓋底腫瘍はアプローチが困難で、術中ナビやMRIを駆使し安全で且つ腫瘍の全摘を目指すが、若い女性患者さんも居られるため審美性にも配慮したい。手術によって頭蓋に大きな欠損ができる場合は3Dの人工骨を移植するが、材質によっては皮膚欠損や、繰り返しの手術による自家骨の吸収など課題がある。また骨に浸潤した腫瘍の場合には欠損部が非常に大きく、移植する人工骨の形状も複雑で作成が困難である。移植する人工骨の形状を術中に3Dスキャンして、手術が終わる3-5時間程度の時間で移植する人工骨を作る技術を開発したい。
3.くも膜下出血の制圧を目指して
~予後予測から治療の最適化まで~
【講演者】特定助教 池堂太一
<概要>
クモ膜下出血は半分の患者さんを死に至らしめ、残りの半分の患者さんを後遺症により社会復帰を不能とする重篤な疾患で、原因の殆どが動脈瘤の破裂で至る所に課題がある。動脈瘤の止血にはクリッピングとコイル塞栓の侵襲的な手術しかなく、出血による脳のダメージを回復する方法が無い。脳動脈瘤の検査はCTやMRIなどで見つけることができるが、破裂に至るメカニズムは明らかになっていない。クリッピング術・コイル塞栓においても機器の改良が必要である。CT画像などから治療介入の方針や予後予測ができる技術開発も行いたい。
4.手術支援機器としての脳血管内視鏡の開発
【講演者】特定助教 千原英夫
<概要>
脳血管内治療は適用の拡大などで増加しているが、脳血管内治療はX・Yの透視画像下で行うため詳細が見えない(血栓、遮蔽物、アーチファクト、造影剤)ため、術者が立体構造を想像する必要がある。放射線透視以外の可視化モダリティーがあれば、安全性を高め、適用を拡大し、習熟度を高めることができる。Angioscopyは血管壁の検査に用いているが、血栓除去やコイル塞栓等の治療を見ながら行う手技を可能とする機器を開発したい。